いわゆる住宅業界というのは、かなり特殊な世界のようです。
一般建築畑で育った私にとって、設計や施工のスタイル、仕事の進め方が大きく異なると感じます。
設計事務所が設計・監理を行い、建設会社が施工する。建築主とのトライアングルが、一般ビル建築のつくり方です。
建設会社は設計図に基づく見積もり、入札によって選ばれますし、JVといって共同受注もあります。
だから共通言語としての図面や仕様、施工の進め方とルールがあります。
初めて会う人でも、ちゃんとコトバが通じます。
公共であれ民間であれ、多くの場合、発注者はプロもしくはセミプロです。
工法や建材なども実利、実性能、実績が重視され、単なる差別化のための売り文句は通用しません。
それに対して住宅業界は、互いをライバルとして熾烈な営業合戦を繰り広げる世界です。
設計~施工はブラックボックスとなり、共通言語が存在しません。 同じ設計図を元に競争する、ということはないのです。
互いに比較することに意味はないし、そうしたジャーナリズムも存在しません。
住宅業界での顧客はコンシューマですから、家電やクルマのようなわかりやすいアピールが要求されます。
多くの建材・設備では、住宅向け、ビル向けで異なる商品体系があります。
私たちは、大きなビル建築と同じように、小さな住宅をつくっています。
依頼主のために、プロとして建設会社と渡り合うのが、私たちの仕事です。
技術者、デザイナーでありながら、依頼主の利益を守る弁護士のような役割も持っています。
相手が地場の大工さんであれ、大手ゼネコンであれ、私たちのその役割は変わりません。
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