日本の住宅事情の貧しさを言われて久しいですね。
でも本当にそうでしょうか。
たとえばキッチン。
和食、洋食、中華、エスニック...
あらゆる料理を家庭でつくる日本人のキッチンは、諸外国と比べてもかなりのスペックです。
日本人の多くは毎日お風呂に入り、毎日大量の洗濯をします。
そのために立派なバスルームと洗濯室を備えています。
家の中に儀式や宗教的な場、あるいは客間としての和室を備え、神棚や仏壇の置き場もあります。
靴を脱いで生活するために、あるいは家の顔としての広い玄関があります。
部屋毎にクローゼットがあり、TPOに応じた衣類が収納されています。
室内は最新の家電製品などの物品であふれています。
亜熱帯と亜寒帯の中間に位置するため、強力な冷暖房空調設備を備えています。
地震国であるため、厳しい耐震基準が法律で定められています。
地方都市ではクルマが一家に2台あるのが普通で、多くはガレージに格納されています。
日本の住宅は、世界的に見てもハイスペックであると感じますし、床面積も決して小さくはありません。
でもそれが必ずしも豊かな住空間につながらず、むしろ多くの重荷を背負っているように感じることがあります。
多くの国では日本人ほど自炊をせず、洗濯機の無い家庭もあるようです。
街の公共空間が充実すると、家に求められる機能は少なくなるのかもしれません。
日本人の生活文化の豊かさは誇るべきものだと思います。家は家族を守る大切なものです。
でも、家が全てを解決するわけではない、とほんの少し割り切ることで、家はもう少しシンプルに、そしてより楽しく美しく伸びやかになれるのでは、と思います。
割り切れるポイントは各人各様ですから、それを見つけることは設計者として重要な仕事です。
家づくりというよりも、生き方に関わることなので、じっくり話し合いたいと思っています。