あの頃流行ったね....とは言われたくないですね。
サイディング、システムキッチン、ビニールクロス、照明器具などなど。
特に既製の建材類は、10年もすれば時代を感じさせるものになっていきます。
いかにも高度成長期風だね、バブルっぽいね、ああ、不景気な時代のローコスト住宅だね....
私たちのような業界人なら、いつ頃の建物かすぐわかります。
デザイナーである以上、流行に鈍感ではいられませんが、デザインの賞味期限は少しでも長くあってほしいと思います。それが、建物の寿命を延ばすことにもつながります。
美しく古びる材料と言えば、すぐに自然素材が浮かびます。 天然木、漆喰、和紙...でも、それだけではないと思います。
また、建材や設備の耐用年数よりも、そこに暮らす人に「飽き」がくる時間の方が短いことは少なくありません。
下の写真は、スチールハウス・プロジェクトという、規格型住宅です。
特定の依頼主への一品生産ものに比べて一般性が必要なため、流行を外すわけにはいきません。
ローコストなので自然素材も多くは使えません。 でも、上っ面だけ綺麗な安っぽい仕上げも使いたくない。
鉄もペンキも、数百年前からあまり変わらない材料です。古びても味が出てきます。
柱や壁がない大空間は、自由に家具を配置でき、リフォームもしやすくなります。
剥き出しの鉄骨の荒々しさを、白く塗りつぶして穏やかに爽やかにまとめています。
個性を持たせながら、シンプルに、懲りすぎず、住まい手の暮らしを緩やかに受け止める「寸止め」のデザイン。
結果的に飽きが来ず、長い寿命を保てるのでは、と考えました。