古い街並み、高台や森の中、川べり....
そうした立地では、自ずと環境を取り込んだ外観デザインが発想されます。
難しいのは、新たに造成された住宅地です。
真四角な敷地が整然と並び、店舗その他の施設もなく、新築住宅だけでつくられる街。
住宅メーカーが差別化を競い合い、流行の建材や意匠が散りばめられた街。
ここでは、街並みに調和することも、また目立つことも難しいのです。 まるで万博のパビリオンのように。
この家も、そんな立地でした。
壁と屋根の境をなくし、傾け、捻り、切り取り、氷山が沈黙のまま顔を出しているように、硬い殻のように。飾りを廃し、抽象化し、揺るぎない存在感を与えることができれば、住宅地の中に特別な「場」が現れるのではないかと考えました。
三角屋根と煙突が、家であることを表現する数少ないアイコンになっています。
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