20世紀前半、ル・コルビジュエやミース・ファンデル・ローエといった巨匠建築家は、数学的とも言える新しい姿の建築を生み出しました。
それらは多くの建築家に受け継がれ、純粋な幾何学的形態と、研ぎ澄まされた機能美を競い合ってきたのです。
しかし近年、シンプル・モダンと名付けられた住宅が増えています。
同じ間取りでも、切り妻屋根を載せれば和風、寄せ棟で高級感を。
そしてフラットルーフにガルバリウム鋼板の外壁にすれば、シンプルモダンの出来上がり!
それらの家をよく見ると、シンプルな箱形のデザインを、コストダウンの手法として使っていることがあります。
庇や軒がない片流れ屋根、箱形の総2階建ての家は、最も安く造ることができるのです。
倉庫のようにスケルトンな美しさを出せば良いのですが、内部にはただ普通に小部屋が並ぶだけでは、コルビジュエの言う自由な空間にはなりません。
構造や機能には整合性がないと、ミニマルな美しさも出てきません。
本当にシンプルな建築をつくるのは、設計も施工も非常に難しいものです。
外壁材ひとつ変われば、設計はイチからやり直し。
膨大なディテールの施工図を描いて検討し、細心の気配りがなければ造れない。
ひとつ間違えればガタガタに崩れてしまうような、繊細なバランスで成り立つリスキーでストイックな建築。
シンプル・モダンとはそういうものだと思います。
ノート一覧へ